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日高 昭秀
シビアアクシデント時の核分裂生成物挙動, p.85 - 88, 2021/05
日本原子力学会の「シビアアクシデント時の核分裂生成物挙動」研究専門委員会は、最近、活動内容を取りまとめた。著者はその委員として、シビアアクシデント時の核分裂生成物挙動に係る解析コード、FP挙動モデルの節において、燃料からの放射性物質放出モデルの概要と、燃料から放出された後の放射性物質の化学形態について執筆した。また、福島第一原子力発電所事故解析から得られた現行の放射性物質挙動モデルの技術課題として、以下の3点((1)大気拡散コードと環境モニタリングデータから逆算したI/Cs比に基づく福島原発事故後期のI及びCs放出機構の推定、(2)福島原発事故後放射性テルル放出時間の推定及びそれらと個々のプラント事象との関係、(3)福島原子力発電所事故中に正門付近で観測された中性子源及び4号機水素爆発の誘因となった水素の追加発生 -高温炉心溶融物のクエンチ時に起こり得る事象からの類推-)について執筆した。
安藤 真樹
放計協ニュース, (63), p.2 - 5, 2019/04
原子力規制庁からの受託研究として実施している福島第一原子力発電所から80km圏内でのKURAMA-IIを用いた歩行サーベイによる空間線量率測定についての解説記事である。KURAMA-IIの概要、歩行サーベイ測定により得た空間線量率分布マップや経時変化に関する解析結果について、これまでの受託成果報告書や論文発表した内容を元に紹介している。
佐々木 聡
技術士, 29(3), p.4 - 7, 2017/03
オフサイトの現状と課題を、放射線被ばくによる健康影響と社会的影響に整理して解説した。福島の復興のために重要なことは、県外への放射線リスクと福島の実情への正しい理解、県内では放射線以外の社会的課題への取組で、そのための専門家の役割を考察した。
永井 晴康
no journal, ,
原子力機構では、環境モニタリングデータとWSPEEDIの大気拡散シミュレーションにより、福島第一原子力発電所事故による放射性物質の大気放出量推定と大気拡散解析を行ってきた。しかし、この放出量推定には不確実性があり、さらなる新規データの利用や解析手法の改良により改善する必要がある。そこで、環境モニタリングデータと炉内インベントリのCsとCsの放射能比を比較することで、各原子炉における期間ごとの放出状況の推定を試みた。福島第一原子力発電所の1, 2, 3号機の炉内インベントリのCsとCsの放射能比が炉内で一様に分布すると仮定し、これらの環境放出と移行プロセスが同等であることから、沈着量測定における放射能比から、その地表汚染への各原子炉の寄与を評価した。この関係とWSPEEDIの大気拡散シミュレーション結果を比較することにより、放出量が増加した期間について放出に寄与した原子炉を推定した。本推定結果から、福島県東部の高汚染地域は、2011年3月15日の2号機と3号機からの放出によるものであり、岩手県と宮城県の県境及び霞ヶ浦周辺での汚染は、3月20から21日の3号機及び2号機からの放出が原因と示唆された。
萩原 大樹; 井元 純平; 日高 昭秀
no journal, ,
福島第一原子力発電所事故時に環境中に放出されたType Aの不溶性Cs粒子は、3号機SGTSのHEPAフィルタ材が水素爆発時に微粒化して生成した可能性が示されたことから、EPMAを用いてType Aを覆うケイ酸ガラスとフィルタ材の構成元素を調べた。その結果、SiとZnの組成比の傾向がほぼ一致し、フィルタ材がType AのSi源である可能性が示唆された。
Putra, D.*; 中西 貴宏; 鶴田 忠彦; 冨原 聖一*; 渡辺 峻*; 長尾 誠也*
no journal, ,
様々な環境条件の河川における福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウムの移行動態を把握するため、2018年から2019年にかけて福島県および周辺地域(夏井川, 利根川, 新田川, 阿武隈川)の河川水中の溶存態・懸濁態放射性セシウム濃度の観測を行った。平水時における河川水中のCs濃度は、夏井川では最大でそれぞれ1.1mBq L, 11mBq L、利根川では0.7mBq L, 7.9mBq Lであった。降雨イベント時ではこれらの濃度は増加し、Cs濃度は夏井川においては40mBq L, 447mBq L、利根川では18-37mBq L, 210-411mBq Lであった。これらの降雨イベント後には夏井川においては99-100%、利根川では96-100%の放射性セシウムが懸濁態として存在していた。このことは河川水中の放射性セシウムの濃度の支配要因として懸濁粒子の挙動が重要であることを示している。
新里 忠史; 佐々木 祥人; 伊藤 聡美; 渡辺 貴善; 雨宮 浩樹*
no journal, ,
東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所事故に由来する放射性物質のうち、Cs(以下、Cs)は半減期が約30年と長く、今後長期にわたり分布状況をモニタリングし、その影響を注視していく必要がある。森林のCs流出率は1%に満たず、森林は長期にCsを林内に留める機能を有すると考えられる。本研究では、林産物のCs濃度予測モデル構築で必要となる樹木のCs吸収量の推定結果を報告する。阿武隈山地の生活圏に隣接するコナラ林とスギ林において年間降雨量や樹木密度がほぼ同様の林分を選定し、2015年から2019年にかけて伐木により樹木試料を採取した。国際生物学事業計画における養分吸収量の算出方法に従い、植物体の生長に伴う吸収量及び植物体からの枯死及び溶脱により失われた量の総和を樹木のCs吸収量とした。樹木の生長に伴うCs吸収量は、バイオマスの増分に樹木各部のCs濃度を乗じて算出し、樹木からの枯死及び溶脱により失われたCs量は、リターフォール,樹幹流及び林内雨に伴うCs移動量の総和とした。樹木の生長に伴うCs吸収量はコナラ林とスギ林で年間あたりそれぞれ0.1及び0.06%、吸収量の総和は年間あたりそれぞれ1.37及び3.13%となった。IBPによる京都近郊の落葉広葉樹林におけるN, P, Kの吸収量(1.2-20.3%)と比較して低いCs吸収量は、本調査地における2015年以降のスギやコナラ立木のCs吸収が限定的であり、Cs濃度の大幅な上昇が生じにくいことを示す。今後、樹木のCs吸収量と他元素の移行量の差異の要因解明が課題である。
日高 昭秀; 川島 茂人*; 梶野 瑞王*; 高橋 千太郎*; 高橋 知之*
no journal, ,
環境測定データと大気拡散計算による従来の福島事故時のソースターム逆算は、点情報を用いた流跡線解析に基づく予測であり、陸風の場合の予測は困難であった。一方、本手法では、単位放出を仮定したメソスケール気象モデル(WRF)計算から得られる面的な毎時の沈着分布の結果を重みづけし、その合算結果と、文部科学省土壌汚染マップとの誤差を最小にするように重みづけすることにより、ソースタームを評価する。特徴として、陸風の場合でも微粒子の一部は陸側に戻ってくるためソースタームの予測が可能になる。本報では、過酷事故時に燃料から放出されたTeは、大部分が未酸化のZr被覆管内面に取り込まれ、炉心再注水時等にZr被覆管が完全酸化する直前にSnTeとして放出される現象を考慮し、3/11-3/15の時間帯について放出の推定を行った。その結果、各号機の最初の放出として、1号機(3/11、19時頃)、3号機(3/13、4時-6時)、2号機(3/14、19時頃)を予測できた。これらは、いずれも炉内熱水力トレンドから説明可能である。今回の結果は、ヨウ素とCsにおいても、従来評価されなかった3/11夕方遅く、3/12及び3/13の早朝に放出が増加したことを示唆している。